ルナちゃん現れる(3)


(だから私がルナちゃんですよ。)
 関係者の方がグレート・デンをお座りさせておやつをやろうとしたその時、ライ君も欲しがってグレート・デンに寄って行った瞬間だ。グレート・デンがライ君に噛みついた。息子が「ライ君、血が出ているよ」と言ったがたいした事はなかった。が、ライ君はショックだったようだ。彼らの距離がまた開いてきた。
 僕達が「この仔を引き取ります。」と言っても、関係者は「何かあったらいつでも引き取りにきますから」と言ってグレート・デンをおいて帰っていかれた。どこまでも愛されていたのだった。
 グレート・デンは超然とそして堂々としていたが、シッポはいつまでもグルリと自分のお腹に巻かれたままだった。不安だったのだろう。それが健気にみえた。ライ君は「どうしてこんな奴がここにいるの?」的な目で見ている。
 僕達はグレート・デン」を飼う事に決めた。というか、改めて飼う決心をした。
 グレート・デングレート・デンはメスだという。それなのに『可愛くない』名前が付けられていた。多分彼女の風貌からだろう。僕達は彼女におもいっきり可愛い名前を付けてやる事にした。
 我が家恒例の家族会議だ。今日の議題はグレート・デンの名前だ。以前、サラと決めていたバーニーズ・マウンテンドックを、そのおでんばな行動から、できるだけ情けない名前を付けようと決められたムン以来の盛り上がりだった。正直いって、誰も可愛い女の子だとは思わないこのグレート・デンを、可愛い名前を付けてやる事にした。
 決まった。「ルナ」ルナちゃんだ。
 翌日、ピーちゃん先生の所へ連れて行って、全ての検査をして市役所に登録してもらった。そして関係者の方へ電話した。
「ルナちゃんとして市に登録しました。ライ君と一緒に飼う事にしました、」