ライ君とルナちゃん(4)


(なんかムンちゃんの話ばかりだよね〜)
 ムンちゃんは机の上の美味しそうなモノをチェックしたら、まずシレ〜とした顔をして通り過ぎる。そして遠くから我々の様子を観察している。それはライオンが伏せて獲物を観察するような緊迫した様子ではない。ムンちゃんは伏せていてもボ〜とした顔をしている。あるいはダラ〜と横になってボ〜としている。でもそれはポーズだと僕達はわかっていた。それでもよくやられた。彼女はそのうちスクッと立ちあがりさりげなく僕達が座っている食卓を通り過ぎる・・・と、見せかけて素早く獲物を(食べ物)を横向きにパクッと咥えていく。コラ〜と言ってムンちゃんの後を追っても後の祭りだ。あっという間に彼女は獲物を呑み込んだ。それは散歩とて同様だ。しかも散歩の方が彼女は賢くいや狡猾に獲物をゲットする。散歩の行きがけにパンなどが落ちていようものなら、当然彼女は興味を示す。僕はダメ!と言ってリードを引っ張り先に行く。一通り散歩しての帰り道、僕はパンの存在なんて忘れている。当然彼女も忘れているような振りをしてシレ〜とそこを通り過ぎる瞬間横に首を伸ばしてパクッ!アッツと僕が気付いて彼女の口を力ずくで開いたらもう獲物は跡形もなかった。
 ムンちゃんに比べるとライ君もルナちゃんも超優等生だ。まず生活形態が違う。ムンちゃんの時は悪い事をしないように高いテーブルで食事をしていたが、ライ君とルナちゃんは冬場炬燵で食事をしていても何の問題も起きない。今では夏も布団を除けた炬燵台で食べているが何の問題もない。そんな時ライ君もルナちゃんも普段は自分の居場所でダラダラとしているが、仮に彼らが興味ある物を食べていてもクンクン嗅ぐだけで咥えたりしない。咥えたりしてもルナちゃんがソロ〜と様子を伺うように口を開けて咥えようとするのでダメ!の一言で治まる。
 散歩とて同様だ。ライ君は忠実なので全く問題ない。ルナちゃんは同じ女の子だからかどうなのか、ムンちゃんみたいに散歩の行きがけに食べ物を見つけてダメと言われ一通り散歩をしての帰り道だ。ムンちゃんと同様に僕はパンの事など忘れているがルナちゃんはしっかりと覚えている。ただルナちゃんはムンちゃんのように狡猾でない。僕がライ君とルナちゃんのリードを持って帰路を歩いていると突然ルナちゃんが立ち止まる。当然僕はオッとリードを引っ張られ立ち止まる。僕が「ルナちゃん、どうしたの?」と訊くと、ルナちゃんこれが食べたい!風な顔をして獲物を見つめている。ああ、そうだったと、僕は思い出し、だからダメだと言ったでしょう、となだめながらリードを引っ張っる。ルナちゃんは渋々一緒に歩きだす。そして僕はルナちゃんに声にして褒めながら家に帰る。「ルナちゃんは本当にお利口さんだね。よく覚えていたねえ。賢い賢い!」そして気を遣ってライ君にも一言。「ライ君は当然一番賢いよ。ライ君が一番!」
 子育て同様、ペットも褒めて育てなければならないのだ。