ライ君とルナちゃん(3)


(今日はムンちゃんの命日だって・・合掌)
 ライ君もルナちゃんも家の中ではおとなしいものだ。吠えないという意味ではなく、問題行動もなくおとなしくしているという意味でだ。ルナちゃんは時折訳もわからず吠える以外は大抵おとなしく寝ている。ライ君は家族が外出する時には、羊が逃げ出すと思うのだろうかうるさい程吠えるが、それ以外はおとなしくゴロゴロしている。いや、一つ問題行動があった。家族全員がいなくなって家を留守にすると、帰宅したら必ずゴミ箱が荒らされている。キッチンシンク上に置いていた生ゴミも散乱している。犯人はライ君だった。というのは、ある日嫁さんがライ君に吠えられながら家を出ていった時だ。その時僕はソファで埋もれて寝ていた。ライ君の吠える声で目を覚ましその様子を見ていた。ライ君は嫁さんが出ていったら当たり前のようにキッチンシンクへ向かいピョンと前足をシンク上に乗せて鼻をクンクンさせている。僕が「ライ、何しよるのかね!」と言ったら、僕の存在を忘れていたらしいライ君はバツの悪い顔をしながら、僕の所へ来て足を舐めながらごまかして媚を売ってきた。これで犯人が確信できた訳だ。僕も嫁さんも多分ライ君であろうと思っていたがこれで現行犯逮捕だ。それでもそのくらい可愛いものだって事だ。
 ムンちゃんもずっといい仔だったと思っていたが、どうしてどうして相当なおてんば娘だった。車内で留守番させればシートベルトの装着器具を破壊するし、家ではメガネを破壊させられた。これだけで被害額は約5万円だ。買ってきたばかりの猫の木彫りも一日にして現代彫刻と化してしまった。ずっと部屋に飾ってあったオーケストラの人形達、つまり指揮者やヴァイオリニストやチェリスト、フルーティスト、ファゴッティストなど全部で11体の人形を飾ってあったのだが、ある日指揮者が犠牲になった。これが人間だったら全治何カ月だろうか?いや精神的にも復帰できないだろう。それに指揮棒も無くなっている。犠牲者が指揮者だけだった事は奇跡だった。などなどムンちゃんにはどれだけの損害を被った事か。でもいつもではない。もしそうだったら我が家には何も無くなっている。本当にたまにの事なのだが、それでも7年間一緒にいたらそれなりにいろいろあった。
 机の上に食べ物があったら大変な事になる。だから高いテーブルで食事をした。それでも油断をしたら大変だ。犬は食べ物の為なら自分の能力の全てをかけて集中力を持ってそれを敢行する。
 例えばルナちゃんはお座りとお手は食べ物をもらう時しか絶対にしない。ライ君とムンちゃんは普段からお手なんて普通にしてくれるし、他人が言ってもする。だからムンちゃんは食べ物をもらう時は凄い。お手ー反対ータッチ(立ってハイタッチ)−コロン(仰向けに転がる)−決め(前足と後ろ足を揃えてピンと伸ばして静止する)までをスムーズにやっていた。
 さてムンちゃんはテーブルの上にある食べ物をよく盗み食いしていた。それは巧妙だった。