ルナちゃん物語(1)


 我が家にやってきたルナちゃんは本当に愉快な性格だった。家の中では大人しく、外ではおてんばだった。散歩へ連れて行くと変に張り切って、ライ君と争うようにリードを引っ張って先導してくれた。そのうえ道草も多いのでやっかいだ。
 ライ君だけの時もそうしていたのだが、大きな河川敷でライ君とルナちゃんをリードから放してやって自由に遊ばせた。ライ君は投げたボールを取ってくる遊びが大好きだったが、ルナちゃんはそれを走って行って邪魔するのが好きだった。ルナちゃんは馬のように走った。
 「帰るよ〜」と声を掛けると、ライ君は忠実にすぐに付いてきた。ルナちゃんは最終的にはよく言う事を聞くのだが、けっこうのんびりと気ままに行動した。河川敷をライ君と歩いて帰っていると枝ぶりのいい木が転がっていた。僕がライ君に「あいつ絶対に咥えてくるよ。」と言いながら歩いていると、後ろからその木を咥えて嬉しそうに我々の横を走り去ったルナちゃんがいた。
 そんな自由気ままなルナちゃんだったが、我が家にやってきて本当に感心した事があった。それは散歩から帰った時など、教えもしないのにルナちゃんはライ君が家の中へ入るまで外で待っていた。それは今でもそうしている。ルナちゃんはライ君が大好きだった。でもライ君は「こいつ何故ここにいるの?」的な対応を続けていた。でもルナちゃんは意に介さなかった。去勢してその気がなかったライ君に色仕掛けを始めた。