はりねずみの話(1)

 僕の店の名前は『ROTEN IGEL』が正式な店名でドイツ語だ。日本語で『赤いはりねずみ』という。ROTENが赤でIGELがはりねずみだ。日本語になるとちょっと誤解される。はり=ねずみと二つの単語からなるから針のあるねずみだと思われやすいのだが、はりねずみは一つの個体の単語なのだ。そしてねずみというイメージでチョロチョロと動いているようだが本物のはりねずみはあまり動かない。僕はまだはりねずみは飼ったことないが、昔(もう30年前になるのか〜)ドイツに留学して学生寮にいた頃庭にはりねずみがいた。初めてはりねずみなるものを発見した僕は感動して部屋にカメラを取りに帰った。戻ってくるとそのはりねずみはそのまま動かないでいた。僕はひっくり返したり手のひらにのせたりして写真を撮った。はりねずみとはそんな生き物なのだ。だからねずみとは全く違う。
『赤いはりねずみ』は僕の尊敬、敬愛する作曲家ブラームスがウィーンでの行きつけのレストランの名前で僕はその名前を付けさせて頂いた。もうそのレストランは現存しないので名前の由来はわからないが、関係あるかないかわからない物語がチェコにある。ウィーンはチェコハンガリーと関係が深い国なので僕はその物語は少しは関係あるのではないかと思っている。でも残酷な話でもある。