作家が書いたピアノコンクール(3)

 このコンクールで鳴り物入りの参加者は弟子をとらなかった故ホフマン先生の唯一の弟子風間塵少年だけではなかった。栄伝亜夜は天才少女として音楽活動していたが彼女が13歳の時彼女を精神的に支えていた母親が亡くなる。そのショックから以前から決まっていたプロコフィエフのピアノ協奏曲の演奏をドタキャンしそのまま音楽の表舞台から消えてしまう。そんな彼女が大学受験の頃浜崎という男が亜夜の所へ来る。彼は亜夜のお母さんと同級生でお母さんの命日に近くお母さんが好きだった亜夜のピアノを聴かせて欲しいと言う。亜夜はショスタコーヴィッチのソナタを弾く。浜崎は音楽大学の学長だった。亜夜に大学の試験を受けて入るように勧める。学長推薦の特別入試だった。亜夜はピアノの技術だけでなく音楽学も勉強したかったのでその勧めを受け入れ合格する。浜崎には亜夜と同じ年の次女奏がいた。二人は姉妹のように仲がよかった。奏はヴァイオリンをしていて音楽的な耳は抜群によく亜夜のピアノをとても評価していた。コンクールに出ること自体迷っていた亜夜に対して奏が積極的に後押しして自分のドレスを貸してやった。亜夜は気が進まない精神状態であったが浜崎に恩義を感じ奏との友情の上にコンクールの参加を決めたのだった。このピアノコンクールは芳ヶ江国際コンクールという。勿論架空のコンクールだが音楽をする者は日本のあのコンクールがモデルになっているなと容易にわかる。コンクールには絶対的な権威のある有名なコンクールがある。ロシアのチャイコフスキーポーランドショパン、ドイツのミュンヘン、スイスのジュネーブイギリスのリーズ等、そこまでの権威ほどでないコンクールはそのコンクールの受賞者がレベルアップして権威あるコンクールで入賞することでコンクールそのものが評価される。この小説の舞台になっているコンクールはそんなコンクールだがそれでもコンクールのレベルは凄いしその表現を作家は非常にうまく書いている。