作家が書いたピアノコンクール(1)

 昨夜は暑かったので夕方の散歩はやめて深夜にルナを連れて出た。公園へ向かう道のりの中で何度もルナを見たが何度見てもティラノサウルスにしか見えない。公園に着いたがさすがに人も蛍もいなかった。毎年7月初旬まで毎夜中来てはperdendosi(息絶えるように)のようにだんだん少なくなっていく蛍の最後の1匹まで見守っていたのだが、さすがに今年はあれだけ少ないともういなくなるよなあ・・・と思いながらルナのリードを放して自由にさせてやった。ルナが周りをウロウロしているその時僕の少し先の草むらに一匹の蛍が光りながら飛んできて停まった。僕は邪魔しないように立ち去ろうと動いたら徘徊していたルナが一目散に走って僕の所へ戻ってきた。恐竜だとそうはいかないだろう。僕は改めてルナが犬なんだと確信した。
 さて僕が以前読んでいたゲーテファウストの一巻を読んだ時ルナがまだ開いてもない第二巻をボロボロにした。
とりあえず何か読もうと思い読んだのが直木賞を受賞した恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』だ。直木賞受賞直後に一度読んだのだがその後同作が本屋大賞にも受賞されたのでもう一度じっくりと読みたくなった。なぜなら本屋大賞に選ばれると慣例的に映画化される可能性が高いからだ。『蜜蜂と遠雷』はピアノコンクールという舞台を背景に登場人物のエピソードを中心に話が展開される。コンクールで弾かれる多くのピアノ曲がリアリティある恩田さんの筆致で紹介される。それも評論家が書いた文章と違い、曲に対して詩情豊かな表現で書かれていて感心しながら自分がそこにいるような気持ちで読んだ。登場人物の精神に自分を投影しながら彼らが弾く曲を脳裏から引き出しながら一気にそしてじっくりと読んだ。