蛍を見ている話(2)

 この公園は防犯の為か夜10時まで眩しいくらいにあちらこちらに照明がついている。それが10時になるとパッと照明が消えあたり一体が真っ暗になる。通常蛍は8時から9時が一番見頃でその後だんだんといなくなってくる。
この公園は10時まで明るいのでここの蛍は暗くなってから活動し始めるようだ。だから僕が犬の散歩でくる深夜0時頃が一番の見頃となる。もちろんこれは僕の見解だがおそらく間違えではないと思う。さすがに深夜0時頃に真っ暗な公園を散歩するような人はいない。だからこの時期は僕一人のファンタジーの世界が展開される。
 先日は昼は暑かったのに深夜けっこう寒かった。そのせいか蛍があまり出ていなかった。しかたがないので手の届くような草の茂みで光っている蛍を手でそっとすくい上げた。するとなんと交尾している二匹の蛍だった。お尻とお尻が引っ付いていたので一つの光に見えたようだ。手に乗っている蛍の恋人たちはいっこうに逃げる気がないらしく手のひらでじっとしている。観察してみると大きさが結構違う。おそらく大きい方がオスだろう。発光体の形も違い、オスはいつも見慣れている一つの発光体が強弱を点滅させていた。一方メスの発光体は後ろ前の二つに分かれていた。点滅はしないで初めは淡い光だったがしばらくするとオスに負けないくらい強い光を発した。蛍光ペンとは上手いことつけたなあと思った。そのカップルたちは微動たりせず同じ状況が続いたが僕はいろいろと観察ができ飽きることはなかった。一緒に来ていたルナのリードを手放した。は木でできた遊歩道を右往左往し時には低い土手にあがったりしながら勝手に遊歩していた。気がついたら1時間以上僕はそのカップルを眺めていた。僕はそっと彼らを草の茂みの中にそっと戻してやった。そしてフラフラしているルナを連れて帰った。
 実は今度7月に久しぶりにオーボエ奏者である元蛍係長とアンサンブルの演奏がある。その前に練習があり久しぶりに会う。我々は練習後は前倒しで打ち上げを行う。その時彼にいろいろと訊きたいことがたくさんできた。酒の肴には困らない。