ライくんの記(4)

 ライくんを火葬しに行った往復で妙な事があった。ライくんは大型犬で地元で火葬してくれるところがない。それは承知していた。一番最初のバーニーズのムンが亡くなったとき何もかのわからない中で本当に奔走した。獣医に相談し地元の火葬会社の人に来てもらい大型犬は不可能だとわかり下関の火葬会社を紹介してもらいようやくそこへたどり着いた経験から、前回亡くなったグレートデンのルナは淡々粛々と事を済ますことができた。ところが今回、ライをその火葬会社へ連れて行くのに何度も道を間違えた。そして骨になって連れて帰る時も、いつも降りる高速の小郡インターを降り損ねた。こんなことは僕の人生で初めてだ。僕は次のインターの出口の山口まで向かうことになった。その山口インターの近くに行きつけの獣医さんがいることを思い出した。それで獣医さんの所にお別れの挨拶に行った。
 その獣医さんとの初めての出会いは初めて飼ったペットのウサギからだった。その時はなんてクールな獣医だ!と思ったのがもう25年前だ。その後はその獣医さんの含蓄ある話を聞くのが楽しみだった。お互いそれなりに歳をとって丸くなったのか・・・先生は僕の「ライは老衰だったでしょうか?」という質問に「おそらく心臓でしょう。」と答えられたので「善処の余地はあったのでしょうか?」と訊くといろいろと可能性の説明はされたが最後に「ライが山田さんの所へもらわれて幸せ太りになりそれで心臓に負担がかかったとしても、12年も生きてきて幸せだったのではないのですか。」いつもクレバーでクールな先生が優しく僕に言ってくれた。帰路に向かう中、やはりライくんは先生に最後の挨拶をしたかったのだと思った。