著作権問題の報道に思う(5)

 JASRACについて人からよく訊かれる事がある。徴収された著作権料は本当に本人(作曲家)の元へ支払われるの?これについて僕が先ず言えるとしたら、ユニセフと一緒で組織を運営する事務方等多くのスタッフはボランティアでやっているわけでない、ということ。僕がまだ青二才だった頃、フランス人の現代作曲家のクラシック作品を演奏したら、けっこうな著作権料を請求された。その時僕はJASRACに電話して、本当に本人へ僕の著作権料がフランスまで送られているのか?と青臭いことを言ったことがある。返答は勿論NOでありそんな義務は当会にはないとの回答だった。
 著作権に該当する現代の音楽といってもいろいろなジャンルがある。ポップスやジャズ、邦楽など多岐にわたる。クラシックのジャンルだけでも多様だ。多くの宮崎アニメの音楽を作曲した久石嬢もいれば、超難解なコテコテの現代曲もある。僕はそんな現代曲が好きだったので是非とも積極的に演奏したかった。でも諦めた。だって現代曲は何倍もの練習とリハーサルが必要であるにも関わらず、聴衆のほとんどは喜ばない。その挙げ句著作権料を払わなければならない。上記をJASRACにぶつけてみた。それでもなぜ演奏したいかと言うと、現代曲の良さを少しでも伝えたいのだ。それがアニメ音楽と同じ基準なのはおかしいでしょ。無名作曲家の現代曲は別枠の基準を設けるべきだ。と訴えたが軽くあしらわれた。その時僕は彼らはお金になる作品しか見てないと思ったものだ。そして現代曲を人前で演奏するのをやめた。ただ唯一、現代演奏法の面白さを知ってもらうため自分の作品を演奏している。
 さて、1回の演奏会で使用する曲は本格的なクラシックであれば3曲程度、ジャズや『嵐』のコンサートで多くて25曲程度だろう。もう一度確認しておく。著作権料は曲の長さだけでなく観客の数、入場料などでぜんぜん金額が変わってくる。アリーナやドームで何万人の観衆を集める『嵐』のコンサートに掛かる著作権使用料がいくらになるのか僕には想像もできない。しかも忘れてはいけない。ステージが始まる前はずっと観客のざわめきだけではあるまい。会場に流れているBGMにも当然著作権料が掛かっているのだ。