学校公演企画(8)

アイルランドは不幸な歴史を育んでいる。実際に今でもアイルランドという国があるにも関わらずイギリスの中に北部アイルランドが存在する。最近はあまり報道されないがイギリスでのテロの多くは北部アイルランドの解放戦線がらみだったと記憶している。バイキングを祖先に持つ勇敢な国民性、ニューヨークの消防士はアイルランド系の人が多いと聞く。そんなアイルランド人の気質を恐れて周辺国はアイルランドを警戒した。アイルランドの伝統的なものまで迫害した。アイリッシュダンスという下半身で踊るダンスも監視下で窓からは映らないダンスが生み出されたと聞いた。伝統的な弦楽器や管楽器も没収破棄された。だからアイリッシュホイッスルという楽器は古い民族楽器ではない。だってマウスピースという息を吹き込む箇所はプラスティック製だ。それだけで吹くと放牧された羊たちを追いたてる犬を操る笛にしか聞こえない。そのホイッスルを繋ぐ管体は安っぽいチタンで出来て六つの穴が開いているだけだ。つまり貴族に支えられ伝統的な木製の楽器とはあまりにもかけ離れた管楽器なのだ。だが、僕はそのアイリッシュホイッスルが大好きだ。大仰な表現をするとアイリッシュホイッスルに本質的な魂を感じる。イギリス、正式にはグレートブリテン及び北部アイルランド連合王国の音楽は日本と音階が似ていて親しみやすい曲が多い。本来はアイリッシュホイッスルでイングランドスコットランドの曲を吹くべきではないかもしれないが、僕はあえて意識的に吹いている。『ロンドンデリーの歌』『アニーローリー』『庭の千草』本当にいい曲だ。あとアメリカの消防士が殉職した時に奏される『アメージング・グレイス』。これらを吹くと本当に泣けてくる。