師走の呟き(15)

師走もあっという間に大晦日に向かってまっしぐらだ。僕も師走のうちに呟く時間がなくなってきた。
 クリスマスイヴのミニコンサートで僕はオーボエの冨田さんとモーツァルトの二重奏を演奏したと前回のブログで書いたが、今日はその時のエピソードだ。冨田さんがオーボエダモーレ(オーボエより少し大きいオーボエ)から持ち替えるオーボエの組み立てに時間がかかって「もう少し何か話をしててください」と言われたので僕はとりあえずモーツァルトのオペラの話を少ししたが、彼はまだ隣で音出しをしている。彼は本当にマイペースなんだとその時に知った。しかたがないので僕は自分のフルートの状態について話をした。それは数ヶ月前からだった。フルートを練習しているとボトッっと音がしてびっくりして床を見るとフルートの足部管という先の部分が落ちていた。そんなことが3回くらいあった。ようするに接合部分がゆるゆるになっていたのだ。以後そこに気を使いながら吹いていたのだが抜けかけていた事はしょっちゅうだった。だから一曲吹く度に足部管をぎゅっと本体に刺し戻す習慣になっていた。僕はその事を冗談っぽく「演奏中に変な音がしたらこれが落ちたと思ってください。」と足部管を指さしながら言った。でも一、二曲程度で落ちる事は無いと思っていた。そして2分程度の演奏が終わり拍手に応えて礼をした時ボトッと音が教会内に響いた。ドッと笑いがおこった。隣で彼が「本当に落ちるんですねえ。」とまだもう一曲あるのに暢気な事を言っている。という事で僕は今日フルートを梱包して東京のフルート調整師の許へ送った。家へ帰るとちょうどテレビである宅配業者がたくさんの客の荷物を叩きつける場面が映し出されていた。いつもなら何も言わないでフルートを送りつけていた僕はすぐに電話した。「すみません。今日フルートを送りましたからフルートのオーバーホールよろしくお願いします。」と。僕は小心者だ。師走はなにかと慌ただしい。