師走の呟き(12)

ニューシネマパラダイス』の話だ。1時間長いノーカット完全版は前回のざくっとしたあらすじにちょっとしたエピソードが挿入される。アルフレッドの葬儀に30年ぶりローマから故郷の村へ駆けつけたトトは青年時代に付きあった恋人に会いに行く。その恋人は人妻になっていた。旦那は実はトトの幼馴染だったのだがここではどうでもいい。トトは昔の彼女になんとか会う事ができ「どうして兵役から戻った時に会いに来てくれなかった?」と問うた。実は恋愛時代、彼女は父親の仕事の都合で遠方にいたがなんとかその日は会いに行けるので映画館で待っていてくれと連絡をくれたのだが彼女は来なかったのだった。彼女は答えた。「少し遅くなったが映写室へ行って自分のメッセージを貼り付けアルフレッドにも自分の気持ちを伝言して帰ったのだ。」と。当時アルフレッドは意図的にそれをトトに伝えずに故郷を出ていけと言ったのだった。トトは思っただろう。なぜアルフレットは?と。ラストシーンのアルフレットが残してくれた昔のフィルムの繰り返されるキスシーンはちょっと違ったニュアンスになる。僕の好きなブラームスブルックナーを「交響的蛇足」と揶揄したように、僕も今までノーカット版が好きではなかった。なぜならクライマックスの感動的なラストシーンがボケてしまっているように思っていた。確かに僕はブラームスは昔から大好きだったが今ではブルックナーも大好きだ。さて今回の『ニューシネマパラダイス』の劇場版を保存するつもりで録画した。だが人生とは面白いものだ。今までいいと思っていた劇場版では物足りなかった。交響的蛇足でもいいではないか!と思った。あのまま真実がトトにも聴衆にも伏せられたままだったらつまらないではないか。もちろん真実がわかってもなにも変わらない。だからこそいいと感じる僕がここにいた。僕は録画を削除した。さてさて今日はグリューワインを飲みながらブルックナーでも聴こう。いやいや、もうすぐクリスマス・イヴだった。練習しなきゃあ・・・