師走の呟き(4)

母校が変わったとはいえ狭い敷地に建立しているので設計上どうにもならないのであろう校舎は外観そうたいして変わってはみえない。建物が新しくなったなあ程度だ。だが中に入るとビックリするくらいの立派なロビーがあった。僕がここにいた頃の記憶とオーバーラップして、なんだか場違いな所へ来てしまったような罪悪感からかすぐに隣接する世界平和聖堂へ向った。聖堂の外には人が大勢いた。どうやら結婚式のようだ。幸いにも新郎新婦の関係者は聖堂外の控室へ向っているようだったので僕は聖堂内へ入ってみた。聖堂の空間と空気は僕がいた約35年前と全く変わってなかった。僕は写真撮影しているウェリングドレス姿の新婦さんと新郎さんに「おめでとうございます!」と声を掛けて聖堂を後にして帰った。
 秋が深まった11月にまた広島へ行った。これはたまたまだが、僕が興味があったエッシャーの展覧会が催されていたのだった。エッシャーの代表的な絵画では、水が下に流れ落ちているのに辿っていくといつの間に一番上にいた図や、飛んでいる黒い鳥がいつの間にか白い鳥に反転していた図が有名で、誰もがだまし絵として知っているだろう。しかも開催されている美術館は母校の近くにあるので、その日は前回と逆に(7月は駅からタクシーでお寺まで直行した)歩いて母校まで向った。今回は別に時間の制約がなかったので母校の中を深く侵入してみるつもりでいた。