師走の呟き(2)

体調が回復するにつれ食欲も小食ながらでてきた。ただ食欲不振の影響か、好き嫌いが全くなかった僕が好き嫌いが始まったが、それも徐々になくなっている。それに伴いフルートの調子も随分良くなった。フルートにおいては実は3年前からスランプに陥り苦しんだ。あんな精神状態、演奏状態は初めてだった。自分の楽器を自分の唇で吹いている気がしない。最悪の時は唇も指も震えが止まらなくてそれがずっと強いトラウマになった。寝る時も起きた時もいつも強い強迫観念に囚われた。演奏する機会があっても、その日が怖いだけだった。どうして演奏をしているのだろう?と思い悩んだ。実際に演奏でその場をやり過ごすだけでいっぱいいっぱいで音楽表現に精神を集中する余裕もなかった。それが最近やっと音楽を楽しみながらフルートを吹いている。それが今年の収穫だった。でも一番ではない。だって調子が良くてもトラウマはずっと消えない。今年のいい思い出はいくつかある。東京のサントリーホールベルリン国立歌劇場管弦楽団を聴いた。バレンボイムの指揮とピアノでモーツァルトのピアノ協奏曲20番とブルックナー交響曲9番だった。圧巻の名演奏だった。勿論福岡でもいくつもの演奏会を聴いて感動した。でもこれからも素晴らしい演奏会はいくつも聴けるから、今年の一番よかった事にはしない。今年の一番よかった事は母校であるエリザベト音楽大学がある広島に行った事だろう。