仔猫騒動記(2)

僕はアルファだけは何とか我が家で飼ってやりたかった。だから餌やりは、店のドアを開けて店内へちょっとだけ入った所へ置いた。その頃はずいぶん慣れてきたアルファは警戒しながらも入ってきて餌を貪った。他の猫たちは入ってこれないでいる。僕の思惑通りだった。思惑とは左脳思考の作用であって、僕は右脳感覚(感情)の方が強かった。つまりアルファだけが店に入って来た時点で思惑(作戦)通りにいったのだから、そのまま冷静に対処すべきであった。しかし猫たちはいつも僕が来るのを待っている。すぐに3匹いた黒猫の一匹がいなくなり、母親似の仔も時々しか姿を見せなくなった。コゲはいつも恨めしそうにじっと僕を見ているが心を鬼にして無視していた。時々話しかけたりもした。「お前が捕まってくれて避妊できたらずっとここにいてもいいんだけどねえ。このままだと犠牲になる赤ちゃんがまたでてくるでしょう?!もうちょっと上手に子育てしてよ。」ところが彼女(コゲ)は僕が思っているより愛情に満ちた想いをもってここにいるのだと後で知る事になる。結局僕が一番情に左右させられた。グレー猫のアルファは5匹の仔猫の中で一番チビだった。同じ位チビが黒猫のアドルフだった。僕はもう一匹の少しだけ大きな黒猫を「アドルフ姉ちゃん」から「ジジ」に改名した。同じチビ同士アルファとアドルフは本当に仲が良かった。いつも一緒にいて僕が来るのを見張っていて、夜は寒いからとお布団で囲った臨時の家で寄り添って寝ている。だから僕はまだお店に入ってこれないアドルフには店外や寝床に餌を置いてやる。そのうちジジがお店にきてアルファと一緒に餌を食べるようになり、ルドルフもくるようになった。お店のすぐ外ではコゲがジッと見ている。でも彼女はお店に、いや僕に近寄る事は無い。時々顔を見せる母親似の(名前は付けてない)仔猫も遠目からアルファ、ルドルフ、ジジが食べているのを見守っていた。結局、どこが心を鬼にしてだ!!と自分でも情けない。