シータとカイ(4)

僕の家内はカイの方が好きみたいだ。「カイちゃん、ご飯食べるかね。」と甲斐がいしく可愛がっている。そしてシータの事を「シー太郎」なんて呼んだりする。それでもシータは家内が食卓でご飯を食べたり新聞を読んだり化粧をしていると「ミャッ、ミャッ」としつこく纏わりついている。行動だけは八方美人のシータは僕にも絡んでくる。「ミャッ」と鳴いてソファの背もたれに上って僕の肩に手を掛けながら「ミャッ〜ミャ〜」とうるさい。「あんただけは何が言いたいのかよくわからん。」と構ってやらない。猫の習性だろうがシータもカイも時々僕の顔に接近してきて僕の顔をジ〜と見つめながら僕の口元に口を寄せる。おそらく僕の口を匂って(臭って?)いるのだろう。カイは僕の口ギリギリに自分の口を近づけてくる。親バカながらカイは別嬪さんだから僕はキュンとくる。そして僕が唇をちょっとだけ突き出すとカイは逃げて行く。シータも「ミャッ」と言いながら僕の口へ顔を近づけてくる。家内はシータを赤ちゃん猫の頃から「不細工だ」とよく言っているが、僕はそうは思わない。が、けっして別嬪ではない。そのシータの顔が接近しても僕はカイのように唇を突き出さない。なぜならシータの方から僕の唇に自分の口を付けおまけにペロペロと舐めてくれる。猫のベロはザラザラしてけっこう痛い「わかったわかった、もういいよ。」と僕は言ってシータの身体を片手で持って床へ置く。シータは遊んでもらっているとしか思っていない。