精霊の踊り(2)

フルートの名曲精霊の踊りを去年バイオリン独奏で聴いた。カプソンというフランスの名バイオリン奏者のサン=サーンスの協奏曲の演奏後のアンコールとして演奏だった。素晴らしい曲だったし、そうかあ、伴奏が無くてもできるなあ、と感動した。その精霊の踊りは、グルックというオーストリアの作曲家のオペラ『オルフェウスとエウリヂィーチェ』というギリシャ神話を題材にしたオペラの中の一曲だ。ストーリーはあとで記すが、そのオペラの第2幕第2場に『精霊の踊り』がある。間奏曲ではなく場面でオーケストラの曲があればそこはバレエで踊られたという事だ。
 さて、まずはグルックのプロフィールを簡単に記そう。彼は1750年頃からウィーンで活躍をはじめた。その頃はウィーンでもパリでも世界中でイタリア人の作曲家が席巻していた。その中でグルックはウィーンの宮廷音楽監督になった。あのハプスブルグの大宮廷だ。彼は当時の保守的なオペラを改革して現在に至るオペラの様式を作った。(これ以上は話さないが・・)彼の影響で、モーツァルトの数々のオペラの名曲が生まれたといって過言ではない。それ以降ロマン派のオペラは逆にイタリアの大作曲家たち、ドニゼッティヴェルディプッチーニなどのが活躍するがとにかくグルックはそれらのオペラの源流だったのだ。
次はギリシャ神話の『オルフェウスとエウリディーチェ』に触れるが、オペラマニアで有名なオペラにモンテヴェルディの『オルフェオ』がある。同じ題材だがこちらの方がエコーやアポロンが出てきたりして楽しいが、1600年頃のこのオペラは、オペラファンが観ても「えっ、これがオペラ?」と思ってしまうかもしれない。なんの世界も歴史もそうかもしれないが、ここからこう変わりましたというものはないのだろう。恋人が昨日までは仲が良かったのに今日から仲が悪くなりました、と区切られないように。