妖精エコーの話(3)

皆さんは「ナルシスト」という言葉を言ったり聞いたりしたことがあるだろうか?直訳すると自己愛やうぬぼれになるのだろう。その言葉ができたのはやはりギリシャ神話に登場するナルキッソスなる青年だった。つまり人間だった。彼は泉に映った自分の顔を見て自分に恋をしたのだった。
 さて、その位美しい青年だったのだから当然エコーは彼に恋をした。山に迷ったナルキッソスは大声で叫んだ。「誰かいないのか?」エコーは「誰かいないのか?」と言った。「誰なんだ君は?」ナルキッソスが訊くとエコーも「誰なんだ君は?」と言った。「出ておいでよ。」ナルキッソスが言うとエコーは喜びのあまり「出ておいでよ。」と言いながらナルキッソスに抱きついた。ナルキッソスは「いきなり僕と寝ようとするなんて・・・」エコーが「僕と寝ようとするなんて・・・」と言っている間にナルキッソスは去っていった。恋するナルキッソスを失ったエコーは悲しみでどんどん痩せていってやがて身体が無くなって声だけが残った。これがエコーの物語だ。
 さて後日談を。自分に恋をしていたナルキッソスはやがて一生叶わぬ恋に悩んで耐えられなくなった。ある日短刀で自分の胸を刺して死んでいった。「さらば、恋しい人」・・・ナルキッソスを陰からずっと見守っていたエコーも呟いた。「さらば、恋しい人」・・・