ただしとお別れ(2)


(モナカです)
 カイとシータは(猫に鈴)よろしく本当に鈴が付いた首輪をつけてやっていた。だから僕が2階へ服を取りに上がるとシャリンシャリンと鈴の音が聞こえて必ずシータが現れた。楽しい音だった。それがただしとの関係では禍になった。犬達は居間にしかいなくて猫達は家中自由に行き来できるようにしていたのだが、ただしはカイやシータが居間へ入ると追い立てた。それは仕方ないのだがただしは猫達への好奇心で仲良くなりたくてとことん追って行った。人間の男で例えると完璧なストーカーだ。しかも積極的なストーカーだ。人間だったら注意すると少しは愁傷になるのだろうがただしは全く変わらないどころか猫達の鈴の音に過敏に反応して隣部屋で音でも聞こえれば猫出入り口から顔を出しワンワン吠えた。とうとうカイもシータも全く姿を見せなくなった。
 ただしは1週間のホームステイの予定だった。まだ3日目だった。家内と話しあって、カイとシータの為にただしを引き取る事を断念した。家内は猫派なのでカイとシータの環境が悪くならないように気遣い、僕はただしの環境を考えその結果としての決断だった。僕にとって断腸の思いだった。3日目の朝、ボランティアのご夫婦が連れに来られた。本当に申し訳ない思いだった。車に乗って帰っていくただしの姿が今も脳裏から離れない。猫達はげんきんなものだ。ただしが去ると、カイもシータも居間へ戻ってきた。
 ルナはただしのお蔭でかなり『いい子になった!』と僕と家内はそう感じてそう話していた。ただしのお蔭だねとも話した。ただしがいなくなって2回目の朝の山での散歩から帰って僕は家内に言った。「こいつ(ルナ)大人になってないじゃん!元に戻ってるんじゃん!」と言うと家内は「そおっちゃ!」と即答した。これも同感だった。犬は一筋縄ではいかないって事か。