朝からただし(2)

 家内と山へ行くのは8年以上ぶりだ。前日はルナとただし2匹で行ったのだったが2日目はライも連れて行った。ルナとライと僕で行った時はライは本当に道草を喰いながらタラタラと僕のはるか後ろを歩いてついてくる。ルナは僕の前を走りまわったり後方のライの所まで走って戻ったり楽しそうにウロウロしている。ところがこの日のライは違った。家内がいっしょだったからかライバルのただしが一緒だったからかライはとっても張り切っていた。まずなにより僕らから遅れをとることはなかった。先頭をとることこそなかったが3匹がほぼ同じ間隔で仲良く散歩した。ルナは相変わらず楽しそうに弾んでいる。ただしは2回目の山道で随分馴れた。それらにライは家内にピシッとひっついて一緒に歩いた。山道から中腹の駐車場に降りた時ちょっとしたハプニングがおこった。下からトレーニング着の若者達が走ってきた。まさにトレーニングだったのだろう。おそらく自衛隊の若者たちなのだろう。彼らは僕達がいつも散歩する山とは別の車でも登れる舗装されたもう一つの山の方へバラバラと走って行った。ところがだいつも駐車場より少し下にある砂防ダムで水遊びをして帰る。だからそこまでは人がいなければノーリードで行くのだ。僕達は走っている若者達を横目で見ながらそこへ向かっていた。ところがだ!ただしがその若者達についてあれよあれよという間に走って山へ消えて行った。家内が「どうするの!」と言うから僕が「大丈夫上まで車で行けるからゆっくりと追いかけよう。」と言ってライとルナを車に乗せてまさに出ようとした時だった。山から一人の若者がただしの首輪を捕まえながら笑いながら走って連れてきてくれた。犬好きな若者だろう。もしかしたらラブラドールを飼っているか飼っていたのかもしれない。丁重にお礼を言いたかったが、若者自身みんなからただしのせいで(僕のせい?)遅れをとったので急いで戻っていった。僕はただしの新しい名前を考えていた。だってライ、ルナ、猫はカイ、シータそれでただしではなんだか居候みたいではないか。だから猫達のギリシア名を継承してχ(カイ)θ(シータ)α(アルファ)のアル君にするつもりだった。ところがそんな楽しい関係は意外にも早く終わってしまった。その原因が猫達だったのはなんとも皮肉なものだ。