近況報告(譜めくりの話2)


(2代目ルナも8ケ月でこの位大きくなりました
  写真は初代ルナです2代目は耳が立っていません)
 これから先のピアニストの言葉は僕の翻訳である。くれぐれも注意しておくが、ピアニストは若い女性で言葉づかいはとても丁寧で優しい女性だ。だが僕の心には翻訳のように響いていた・・・という事だ。
「おい山田、練習する前にちょっとこの前譜めくりした時のDVD見てみんか?」「あっ、いいけど」
譜めくりなんて約30年ぶりだった。自分ではうまくできたと思っていた。ましてやDVDで譜めくりをしている自分を客観的に見る事になろうとは思いもしなかった。そしてテレビに映し出された自分にビックリだった。画面は本来は演奏者が主役の筈だ。その時演奏されたのはメンデルスゾーンのピアノトリオの第一楽章で約10分位ある名曲だ。画面に向かって左からヴァイオリニスト、ピアニスト、チェリストが映っている。みなさん女性のせいか遠近法でピアニストの後隣に座っている僕は小さく映っていなければならないのに、会場と撮影のせいか僕が画面の中心に大きく映っていた。しかも曲の冒頭からヘラヘラしているではないか。本来譜めくりは能面のような顔で淡々粛々としなければならない。ところが画面の僕はいきなりヘラヘラ笑っていた。しかもだ何度もヴァイオリニストや会場をキョロキョロとを見ている様子を鮮明に撮られていた。「おい山田、私が文句言った意味がわかったか?お前がピアニストより目立ってどうするんだ!」僕は大笑いしながら「うん、すごくよくわかった。」と言うしかなかった。キョロキョロするだけでも目立っているのだが、画面の僕は失礼極まりなかった。つまりヴァイオリンの演奏で些細な不安定な響きがあるだけでキョロっと見てしまっているのだ。それが一度や二度ではない。僕の位置からはピアニストに被ってチェロの女性は見えなかったのだが、それにも関わらず身体を移動して首を伸ばしてチェロの方を覗きこむ仕草も写し出されていた。僕はひらにひらに謝りながら「すんませんでした。みなさまによくよくあやまっといて!」と大笑いしながらピアニストに言った。実はその数日後にまた譜めくりをする予定があった。しかも曲もかなりたくさんある。「おう、わかった。今度は気をつけれよ!」「はいっ、わかりました。」
 当日大いに反省した僕は真面目にきちんと譜めくりした。
演奏が終わったピアニストの彼女が「今日・・・先生が会場に来ていたねえ?」と僕に言ったので僕は一言「今日は一切会場を見ないようにしたのでわからなかったです。」と言ってやった。