ルナの記(3)


 ルナが我が家へ来たのは6年前のクリスマスの日だった。ルナを愛してくれたその方が一緒に我が家まで連れてきてくれた。我が家はすでにライ君がいた。ルナの振る舞いは超然としていて、まさにグレート・デンそのものだった。因みにデンとはデンマークという国に使われているデン人の意味ではあるが本当はドイツ犬でドイツではグレート・デンなんて言わない。もう一つ補足すると、グレート・デンの耳が立っているのは仔犬の時に切耳して無理に立たしているからで、本来はラブラドールレトリバーのように耳が横になっている。切耳で立たせているのは威厳あるように見せかけるための慣習で、動物愛護の観点から今はヨーロッパのグレート・デンは耳が立っていない。
 さて、我が家は以前バーニーズ・マウンテンドックのムンちゃんがいた。体重は47キロあった。本当に溺愛していたその結果として、2階建ての我が家全てが彼女のハウスになったのだった。そして一階と二階に超大型犬用の立派なベットが置かれてあった。彼女が急逝して1年後に、ペットショップで売れ残っていたライ君(ベルジアン・タービュレン)を我が家へ連れてきた。ライ君はすでに2歳になっていてよく躾けられていた。だから一階の居間だけをライ君のハウスにした。その約1年後にルナがやってきたのだった。
 ルナは我が家の居間に入るなり、ライ君のベットを見て物欲しげにそこへ向かって行った。僕は「ダメ!」とルナを制して2階からムンちゃんが使っていたベットを持ってきて「これが今日からお前のベットだよ!」と言って置いてやった。ルナを幸せになるように願っていたであろうその方も、それで安心されたと思う。我が家にルナを預けて帰っていかれた。
 実はその時のルナの名前は別の『可愛くない名前』がついていた。先ずは思いっきり可愛い名前をつけてやることにした。最初の犬がムン。次がペットショップで既に愛情ある名前がついていたライ。だからこの娘も2文字に、そして顔に似合わない位可愛い名前を付けてやろうとついた名前がルナだった。ルナは我が家で大きな大きな存在になっていった。