徳冨信恵エピソード1−2


 実はこのルナちゃん、3日前から急に立てなくなって、年も年だから(超大型犬は寿命が9年とも言われている)ルナも9歳で心配していたのだけど、とりあえずまた歩けるようになり、食事もしたので安心したのだった。が、これからはそんな連続なのだろう。覚悟をしておかないとまたペット・ロスになると思いながらライと二人で散歩していた3日間だった。
 さて、昨晩はコンサート付きの食事会とはいえ、あれだけの食事を用意して、かつ自分が中心の演奏をしたのは初めてだった。(と、昨晩自覚したのだった)集まったお客さんは15名。当初は演奏前の集中力を高める為に、最初に演奏して食事を出そうと思っていたが、演奏後の気の抜けた精神状態から15人分の食事を一度に提供できる自信がなかったので、はじめに食事を提供してそれから演奏をすることにした。
 この仕事を始めて2年、一応いろいろな状況が予見できるようになった。とはいえ、今回はワンプレーとはいえ15人分なので、前日から予定以上の仕込みがあり練習もありでへとへとになった。で、当日は食事を先にしたのでその用事で朝から奔走。そしてなんとかワンプレーとを提供できてほっとしたのもつかの間、そうなのだった。僕の店は居酒屋だったのだ。皆さんどんどん飲まれるので休む暇もなくいろいろと頑張ったのであった。演奏会はそんな皆さんの最高なる雰囲気に包まれて気持ちよく演奏でき、皆さんも喜んで頂けたと思う。(そう思いたい)
 徳冨信恵は稀有なる存在だ。僕が右往左往バタバタと準備している間も、こっちが頼みもしないのに生ビールを注いだり注文を聞いてくれたりしてくれたのだ。それから約30分の僕のフルート演奏のピアノ伴奏をしてくれたのだ。本当にありがたかった。演奏が終わって僕が洗い物をしていると、なにやらピアノの音が聞こえるではないか。そうなのだ!彼女はお客さんのリクエストに答えてクラシックのジャンルをこえた様々な曲を弾いていた。これぞ、彼女の真骨頂なのだった。おのずとファンが増える筈だ。
 あとかたずけを終えた僕は、彼女とお疲れ様の乾杯をして終えるつもりだった。・・・つもりだったっていう事は・・・?あとかたずけをしている間、僕は自分も彼女のファンどころか大ファンだったんだなあと自覚していた時間だったのだが、その幸せな時間は儚く短かった。本当の大ファンのもとに彼女はさっと消えていったのだった。あとかたづけが終え、(つわものたちのゆめのあと)状態のお店で一人寂しくビールを飲みながら、やはり大ファンにはかなわないなあ・・・と、僕は彼女のファンをやめる決心をした。彼女にはどんどん大きく羽ばたいてほしいと願っている。おそらくこれで彼女のエピソードは終わり・・・かな?