ジュニアオーケストラを聴いて(4)

 ベートーヴェン交響曲第7番にはトロンボーンはいらない。という事はジュニアオーケストラのトロンボーンの子ども達に負担をかけさせたくなかったのだろう。その為だろうか、前半はワグナーの『ミュルンベルクのマイスタージンガー』の前奏曲グリーグの『ペールギュント組曲から6曲抜粋だ。つまり前半は金管楽器が大活躍する訳だ。前半のプログラムの為にトロンボーン一人とチューバをエキストラで呼ばれていた。勿論それにはお金がかかる。そればかりかペールギュントでハープが必要なのでハープもステージに置かれていた。ハープはエキストラの報酬だけでなくハープの運搬費や使用料も掛かる。それならば後半もベートーベンではなくもっとハープやチューバが活躍する曲にすればいいのだが、それでは子ども達が負担なのだろう。なんと贅沢な事だろう。やっぱりオーケストラは贅沢な貴族の産物なのだ。
 さて今回の指揮者は田中一嘉さんで国内の主要なプロオーケストラを指揮されている方で、3年前にもベートーヴェン交響曲第5番の素晴らしい演奏を聴かせてくれた。ここのジュニアオーケストラのいい所だと僕は思っているのだが、ここは指揮者を常任させない。だから毎年いろいろな指揮者の特徴のあるいい演奏が聴ける。子ども達に多様性と柔軟性を養う為にもいい事だと僕は思う。
 演奏に関しては、指揮者は子ども達の能力を十二分に引き出し、音楽的にも十分に満足できるものだった。ジュニアオーケストラを聴いた事のない人なら、ジュニアというイメージを払しょくされるレベルだと感じてもらえるのではないかと思う。特に僕は、少しだけこのオーケストラの内情を知っていて、団員の減少、特に弦楽器の団員不足が深刻だとわかっているだけに、それを素晴らしい音楽的レベルに創っていった指揮者や関係者に感服するばかりだ。酒を控えていた僕もこの日は旨い酒を頂いた。