ペットロス症候群


 ムンが逝ったのは7歳の時だ。大型犬はもう老犬の域に入る歳で、これからどうしようか?と話しあっていた矢先の突然の死であった。薄情な言い方だが肉親の死よりも衝撃的なショックを受けた。感情はコントロールできない。これが本心だ。で、本でその名前を知っていたペットロス症候群に自分が陥った。だからペットを亡くした方々の気持ちは痛いほど理解できると思っている。
 僕の場合だが・・・ここで記すのが恥ずかしい気持ちで一杯なのだが・・・(ムンが自分を思い出して欲しいと僕にインスピレーションを与えてくれているのだという気がするから)、ムンが亡くなって僕は本当にムンの幻影を見ていた。街を歩いても僕の先をシッポを振りながらムンが歩いている。人と部屋で会っていてもその人の先にフテて寝ているムンの姿が見える。そんな精神状態が数ヶ月も続いた。その間、ムンを思い出しては夜な夜な泣いていた。
 ペットロスの処方は人それぞれみたいだ。僕はムンが欠けた焦燥感を埋める為に次の子を受け入れた。それがライだ。ベルジアン・タービュレン(ベルギーのシェパードのような)という犬で僕はあえてムンと全く性格の違う男の子を飼った。似ているのは大型犬という事だけか。実際、彼を引き取る時せめて30キロは欲しいと言われていた偏食の彼が我が家でムンと同じ47キロになるのにそんなに時間はかからなかった。さらに不思議な縁でルナ(グレートデン)を飼う事になった。間違いなくこの子たちは僕の癒しになったし、この子たちのお蔭で逆にムンを忘れる事もなかった。そしてこれは間違いないだろう。この子たちも老犬になった。僕にはもうその覚悟はできている。そしてその日がやってきた時、僕は後悔するのだ!なんでこんなにこの子たちの写真が少ないんだろうって。