曲目解説(7)


 前出のプライアーの『口笛吹きと犬』はオーケストラの曲だが、彼の他の作品は全く知られていない。
 同じアメリカの作曲家で長年ボストンポップスオーケストラで多くの作品を創った作曲家がいる。ルロイ・アンダーソン(1908〜1975)だ。彼は
自分はアメリカのヨハン・シュトラウスになるのだと、多くの親しみある楽しい曲を創った。ヨハン・シュトラウス親子は18世紀ウィーンで本当にたくさんのワルツ、ポルカを創って人々を(当時は貴族)楽しませた。所謂当時のポップス音楽だった訳だ。アメリカン・ポップスのオーケストラ作品をたくさん創った彼もまた、今では立派なクラシックの作曲家だ。
 彼の作品をこういった文字で解説するのはつらい。何故なら彼の作品の魅力は聴いてこそ価値がある。そしてその多くは「ああ、これ聴いた事がある。」と思ってもらえるだろう。ウッドブロックのカンコンカンコンと始まる『シンコペーテット・クロック』紙ヤスリをシャカシャカ鳴らしたり、タイプライター(今はパソコン?)をカタカタ鳴らしたり彼の曲は鳴りモノが楽しい。3本のトランペットの絡みが楽しい『トランペット吹きの休日』やクリスマスの曲?と思えるほど冬定番の『そり滑り』という名曲もある。
 さて僕はプログラムの最後にアンダーソンの楽しい名曲を演奏する。『ワルツィング・キャット』だ。当然猫は真面目には踊らない。とてもトリッキーな動きをして物を落としもするしミャーミャーうるさい。その情景をアンダーソンは見事に表現している。勿論鳴りモノもたくさんある。ウッドブロックやピュ〜と鳴るホイッスルパイプ、トライアングルなど打楽器奏者は大活躍だ。また猫のミャ〜という鳴き声をヴァイオリンが本物のように見事に鳴いて(弾いて)いる。
 今回の僕の演奏はフルートとピアノだけなのでオーケストラのようにはいかないが、一つだけ鳴りモノにチャレンジしたい。あとは洒落っ気たっぷりのアンダーソンだ。この曲にはちゃんとオチがある。この曲の猫は調子にのってやりたい放題だ。だが曲の最後は、猫が一喝され逃げて行く。誰から?それは秘密!