徳冨Nというピアニスト(16)

 オーケストラとはどのような練習をするのだろうか?学校のブラスバンドみたいに毎日のように練習があってそれに指揮者が付きっきりなんていう事はまずありえない。なぜなら本格的にオーケストラを指揮指導できる人材なんて少なく、まずアマチュアレベルでそれを求めるのは難しく、プロではギャラ(報酬)がかかるからだ。ではいくら位?これはピンキリだ。だがプロのオーケストラの定期演奏会で指揮をするような人物だとみなさんが想像するよりはるかに高い報酬だ。しかもそんな指揮者は何度もオーケストラの練習に付き合わない。だいたい1回練習の本番だ。だから事前の何回かはアシスタントの指揮者が指導する。アシスタントといえども馬鹿にはできない。音楽大学の指揮科の講師をされているレベルだ。そういった人材が地方のアマチュアオーケストラの指揮をしたりする。それでも報酬は本番一振り##万はするのだ。それに一回一回の練習の謝礼に交通費宿泊費がかかる。オーケストラの運営はけっこう大変なのだ。だから指揮練(指揮者を伴っての練習)なんてそんなにたくさんできない。あとはそのオーケストラにどれだけお金があるかで、アシスタント指揮者をお願いしたりする。それでもいくらかの報酬が必要になる。だからお金のない学生のオーケストラなんかは学生が指揮をしたりする。それはそれでいい経験になるので貴重だ。だがオーケストラの指揮はただ棒を振るだけではない。その指揮者の持っている音楽から人格から生き様までの全てがオーケストラを媒体にして伝えられる。それを学生に課するのは酷というものだろう。で、オーケストラ演奏会においてソリスト(独奏者)とはどのような存在なのか。ソリストは一人の立派な音楽的個性だ。だからオーケストラを代表する指揮者と対等あるいはそれ以上の存在になる。(あくまでも音楽的にですよ)だからオーケストラの現場ではソリストに対してとっても気を遣う。当然ソリスト抜きでしっかりとオーケストラの練習を積み重ね、事前に一度以上は指揮練も行いソリストを迎えるのだ。ソリストとの合わせも何度もしない。普通一回か二回程度だ。だってソリストは忙しいのだ。オーケストラに何度も付き合う時間があれば自分の練習をする方が合理的だ!と考える人が多いし僕はそう思う。
 では徳冨信恵は今回の演奏でどのようにオーケストラと関わっていったのだろうか?