休憩コーヒータイム(4)

 タイムテーブルとは、ステージの流れを分刻みで記された表だ。アマチュアのオーケストラだと標準的なプログラムは前半は序曲等短い曲と組曲等やや長い曲で後半が大曲というだいたい3曲程度のパターンが多い。だから何人も出演し何10曲もあるような洋楽のタイムテーブルとは比べものにならない位、一枚のベラベラの紙で収まる。もっとも気を使うのはステージや客席の照明の明るさと暗明のタイミング、つまり客席の照明を消し一旦真っ暗にしてステージをパッと明るくするか、ステージを明るくしてから客席を暗くするか等の打ち合わせくらいだろう。照明操作はその係がするが、指示は勿論ステマネの仕事だ。その時場内アナウンス(ご来場のみなさま、携帯の電源・・・)などの有無とタイミングの確認もする。
 さてステージマネージャーがもっとも忙しいのはゲネプロという通し練習中だろう。セッティング表を片手に演奏者の椅子や譜面台の数と位置を確認し、曲間の休憩中に椅子の位置に色テープで印を付けておく。指揮者譜面台の高さを確認しておく。弦楽器はコンサート中に位置が変わる事はあまりないが、ピアノ協奏曲が入ると大きく移動する。その目印を付けてまわるのが大変だ。管楽器もプログラムの前半と後半では椅子の数が大きく異なる場合が多い。それらを一曲ごとに確認するのだ。
 練習が終わって団員が食事をしている間、ステマネはまだまだ忙しい。通し練習はプログラムの曲順に通すとはかぎらない。だからステージ上のセッティングをコンサート一曲目の状態にする。そしてセッティングお手伝い係を集めてセッティング表を配り、曲の進行におけるセッティングの要領を話し、一人一人に役目の確認をする。セッティング係が食事休憩している間、ステマネは舞台袖へ行き、セッティング補充に必要な椅子や譜面台、楽器(特に打楽器)の確認をする。そして指揮者の楽屋へ行くのだ。指揮者の人格によっては、もっとも気が重くなりその日のストレスを一番抱える時だ。(僕に関してはそんな事はなかったようなあったような、昔の事は忘れてしまった。)
 指揮者は本番で楽譜を見る人と見ない人がいるが、アマチュアオーケストラのコンサートで振る人はだいたい見ているような気がする。指揮者によっては本番直前まで楽譜を見る人もいるし、ギリギリ楽屋に籠っていたいタイプの人や早めにステージ袖に行って団員達とコミュニケーションをとりたいタイプの人など十人十色なので、どのタイミングで楽譜を取りにきてどのタイミングで呼びにくるべきか訊いておく。呼びにくるタイミングについては、楽屋にモニターが点いているので必要ないようだが、客入りによって開始が遅れる場合もあるので開演前に呼びに行くのが礼儀だ。こうして指揮者から頂いた楽譜を一人ステージの指揮台へ置きにいく。もちろん楽譜は開いて置く。指揮者によっては曲の始めは暗譜で振り途中で見る人もいるから、曲の冒頭のページでいいかの確認は勿論しておく。本当にA型でないとできない役目だ。あっ、僕はA型だった。いよいよコンサートが始まる。