T.N.というピアニスト(5)

 こうして2013年11月22日{日曜日)秋吉台国際芸術村ホールにて『徳冨信恵ピアノリサイタル』は開催された。ここでは(つまり僕のこのブログは)先日2014年7月12日に行われた徳冨さんのピアノ演奏に対する批評が主旨なので、この時のリサイタルは簡単に触れておく事にする。ただ何故僕が、主旨から逸脱したようにダラダラと長く話を蛇足しているかと申しあげると、僕が関わった彼女の姿こそ先日の彼女の好演につながっているし、それは彼女にしかできない音楽に対する素晴らしいアプローチだと確信したからにほかならない。
 で、話を続けよう。秋吉台でのリサイタルでは僕は彼女と顔を合わせたのは多分リハーサルと本番の舞台上だけだったと思う。リサイタルの最後の曲だけの出番だった僕は、リサイタルの雰囲気を彼女や聴衆と共有する為に前半のプログラムを会場の2階席の柱の蔭から聴いた。彼女の演奏は予想以上に(どんな予想だったかはここでは触れない)立派なものだった。僕は一気に音楽会の緊張した雰囲気に引き込まれると同時に、彼女の演奏会で自分が足を引っ張る訳にはいかないという責任から、僕はかなりのプレッシャーを感じた。
 この後は自分の演奏に集中していたので何も評する事はできない。リサイタル後のみなさんの評価と彼女の感想で僕は本当に本当に安堵したものだ。
 その後はしばらく彼女との関わりはなかったと記憶している。(僕は記憶力がかなり悪い。だから大事な事しか記憶にない。だからそれは違うと言われたら、ごめんなさいと言って謝るしかない。)
 で、次に彼女から突然連絡があったのは今年の2月か3月だった。
「山田先生、・・・」彼女は普段は僕の事を、山田さんと言う事が多い。山田先生と言う時は僕にとってろくな事が無い。 彼女は、山田先生と言ってこう続けた。「私オーケストラで協奏曲を弾く事になったんです。」