徳冨信恵というピアニスト(2)

 先日のコンサートでの批評をする前に、徳冨信恵というピアニストを語らなければならない。そしてそれを語る前に、50歳を過ぎた僕が20歳代の若い女性ピアニストとどうして関わりをもっているのかを話さなければならない、が、その前に二つ程いい訳をしておこう。
 一つはそれを語る前に更に僕の事を書く必要もあるのだがこれは省略する。(これから書く文で理解する必要があれば僕のHPのプロフィールを見て欲しい)
 もう一つは、僕は彼女の事は何もわかっていない、という事だ。僕が彼女の事を語るのはあくまでも彼女と出会った後からの事と音楽を通じての関係からだけだ。
 さて話を続けよう。僕は音楽活動を止めて居酒屋を始めて2年目のある日、彼女は突然に僕の店に来た。一人ではなく彼女の保護者代理人なる男性とだ。(誤解のないように言っておく。あくまでも保護者代理人である。深読みしないように)その時だったと僕は勘違いしていたが、のち彼女は再びやってきてその時、彼女は僕に言った。「自分のコンサートのゲストでフルートを吹いて欲しい。」と。
 その日まで、僕達は面識がなかった・・に等しかった。正確には僕達は一度だけ会っているらしい位の面識だった。その一度は、僕が初めて参加した異業種交流での演奏会だった。そこで僕は少しだけフルート演奏をした。必ずしもベストな状態でないその演奏を聴いて、彼女は僕を選んだという訳だ。何と無謀な!いやここでは何と目の高い方だと言っておこう。(笑)その時の僕には彼女の存在の記憶はなく、名前を何度か聞いた事がある程度の面識だったという事だ。
 彼女は一応熟考し悩んで僕に会いに来たらしい。そりゃそうだろう。僕には突然降って湧いたようなフルート演奏の話。今度は僕が熟考する番だった。本来は辞退するべき話だろうが、そこは長年演奏していた僕の血がふつふつと騒いだ。だって演奏する曲がヴァイオリンの名曲であり大曲であるフランクの『ヴァイオリンソナタ イ長調』全楽章だ。フルートでもよく演奏される名曲だ。しかも目の前の若きピアニストの方から、ピアノ伴奏してくれると申し出ているのだ。
 僕は少しだけ考え、彼女にこう言った。
「一応引き受けます。いつでも後悔していいし、いつでも断っていいからね。」彼女は答えた。「絶対に後悔はしません!」と。去年の5月の事だ。こうして僕達の音楽的な関係が始まった。