再生と復活(4)


(ルナを舐めているのはライではない)
 今日のブログは4月2日の続きではない。
 アポロンの忠告にしたがって、僕はオリンポスから去ってディオニソスの宴の楽しさも忘れ、それどころかお酒も断って真面目に暮らしていた。まさか、音楽の女神ミューズまで追い求めてはいけないというのだろうか?それともミューズのよこしたキューピットと話してはいけないというのだろうか?
 これはギリシア神話での世界だが、牧神パンは得意な笛でアポロンの竪琴と競い合った。その時パンの笛を応援した王様がいた。その王様、実はディオニソスと大きな縁があったのだ。
 母が育児放棄をしたディオニソスを育てた多くのニンフの中の一人に老ニンフがいた。彼はディオニソスに多くの知識をもたらした。そのディオニソス育ての父が酔っ払って倒れていたところを、ミダスという王様が保護したのだった。王様は彼の知識が欲しかっただけだったのだ。老人が解放されるとディオニソスは王様にお礼をしたいと言った。王様は自分が触れるもの全てが金(キン)になるようにお願いした。願いはかない王様は大金持ちになった。ところが王様は自分が触った食べ物や人にまで金に変わってはかなわないし自分に触れて金になってはかなわない!とディオニソスに取り下げを願い出た。愚かな王様はそれ以来、森の神、つまり牧神パンを信奉する様になった。
 そのパンがアポロンと音楽で競い合ったのだ。神々はアポロンの竪琴の方が勝っているとした。その判定に王様は納得いかない。パンの笛の方が勝っていると主張した王様にアポロンは、そんなにダメな耳ならこうしてやるとばかり変な耳にしてしまった。『王様の耳はロバの耳』だ。王様は誰にもそれが言えなくて苦しんだらしい。秘密をもつ苦しみ、みんなが知っている事を自分は知らないと思っている愚かさなどがこの物語に込められているのだろうか。
 夢か幻か、その王様が賢そうな女性と二人で僕の前に現れた。そして僕の笛を褒めちぎってくれた。最近ミューズの幻影を見るようになっている僕は、パンよろしく有頂天になった。その目の先に竪琴を持って皮肉な笑みを浮かべながら僕を見ているアポロンの姿が入った。これでは僕はこの目の前の王様と一緒ではないか。僕は王様にどこから来たのかと訊いた。彼は天井を指さしてあちらからと言った。あっちとはオリンポスか?彼らもまたディオニソスの悪戯だったのか?酒断ちして少しは鮮明になった頭の中で考えめぐらしているうちにその幻影は消えた。
 ディオニソスの宴の後遺症はまだ続いているらしい。だがそれは今の僕はけっして不快ではない。