酒とバラの日々


 これはクラシック音楽ではない。もともと映画音楽なのだが僕は観た事が無い。なのになぜこの曲を紹介したのかというと、音楽が素晴らしくいい。映画音楽なのでいろいろと編曲されている。ジャズ風なものからラテン風なものまでいろいろとだ。僕はこの曲を少なくとも年1回は演奏する。なぜなら、北九州市にあるグリーンパークという大きな公園がある。そこにはサッカーコート3面はあるだろう広大な芝の広場があり、カンガルー園や大きな植物園もある。中でもバラ園は素晴らしい。毎年大きくなっている。そこで春と秋にバラ園フェスタが行われ、毎回そこで音楽仲間と演奏している。バラ園だから毎回「酒とバラの日々」は絶対に演奏していたのだ。今年はその出演がなくなった。このままなくなるかも知れない。もうこの曲も演奏する機会はないのだろう・・・か?
 ところで酒は僕を覚醒させた。ある意味覚せい剤みたいなものなのだろう。酒の覚醒は、自分の演奏が非常に官能的に上手に吹けている・・・と感じる。曲も書き始めるとスムーズに旋律や和音が浮かんでくる。自分にとって酒は絶対不可欠なものだった。
 ディオニソスバッカスの宴で僕はフルートを吹いていた。ディオニソスやニンフたちの前で僕は飲みながら演奏する。彼らは僕の演奏を喜んだ。飲みながらこれだけの演奏ができるのだ。僕は下界でも飲みながら練習した。
 ある時アポロンが僕に言った。「お前は酒を飲まないで演奏できるのか?」僕は言った。「当然です。だって酒を飲んで吹けるのだから、素面で吹けない訳がないでしょう。」するとアポロンは、「では私が竪琴を弾くので、ここで吹いてみてごらん。」僕はアポロンの竪琴の伴奏でフルートを吹こうとしたが、音が全くでなかった。そんな筈はないと冷静になろうとしても、あの官能的な演奏どころか凡庸な演奏すらできなかった。アポロンは言った。「それが現在のお前の実力だよ。ディオニソスの宴がお前の演奏の感覚を麻痺させていたのだよ。」
 それ以来、僕はディオニソスのもとを去った。だって僕は酒をやめてでも音楽の女神ミューズだけは失いたくはなかったから。