ヴァイオリンソナタ「春」


(春はお散歩もたのしいぞ)
 ベートーヴェンを気難しい偏屈な人間だと思っている人は多いだろう。確かに僕もそんなイメージはある。だが僕は彼に会った事はないが、結構モテテいたらしい。まああれだけの芸術家だ。モテナイ訳がない。実際ベートーヴェンは女性に優しかったらしい。病床に伏せる女性の隣の部屋で何時間もピアノを弾き続けていたエピソードも読んだ事がある。ベートーヴェンは一生独身だったが、複数の子どもがいたという記述とその写真を見た事もある。
 さて、最近そのベートーヴェンのヴァイオリンソナタ「春」を演奏する機会があったし、この春にまた2回ほど演奏する事になった。ベートーヴェンのヴァイオリンソナタでなんといっても名曲は「クロイッツェル」だ。だがその曲は冒頭から重音(いくつかの音を同時に出す)から始まるものなのでフルートでは絶対吹けないし、仮に吹けても軽蔑させるだけだ。その意味では「春」はフルートでもなんとか吹ける。実際吹いてみるといい曲だなあと思う。ベートーヴェンの優しさの一面がにじみ出た本当に名曲だと思った。ベーとヴェンはこれを書きながら楽しくてしょうがなかったのではないかと思える。だからちょっと冷静に第2楽章をゆっくりと考え、本来は最終楽章になる筈のソナタで第3楽章に交響曲のように舞曲を配した。その舞曲がまた楽しくてたまらない。一時期は気取っていたがやっぱりベートーヴェンは楽しかったのだと思う。だから当然第4楽章も然りだ。主観的な見解だが、この曲は聴衆として聴くより演奏する方が圧倒的に楽しい・・・と思って吹いた。でその影響は創作にまでおよんだ。前回の可愛くて仕方がない曲を書いて浮かれている僕は、その曲のモチーフをこのベートーヴェンのヴァイオリンソナタからもらった。僕にとっても本当に楽しい出会いであった。