ドビュッシーの夢


(ムニャムニャ・・・)
 ドビュッシーに「夢」という曲がある。前にフォーレの「夢のあとに」が素晴らしい曲だと紹介したが、
ドビュッシーの「夢」もとてもいい曲だ。前者が抒情的かつ官能的な作風なのに対して後者はあらゆる主観、感情を排除し、あいまいなる夢そのものの感覚を具現させたような曲だ。つまりたんたんと夢そのものの曖昧な雰囲気をそのまま音楽にしているのだ。尤もこれはドビュッシーの音楽の特徴の一つではあるが、彼の初期の作品で僕が大好きな曲の一つだ。
 昨晩、楽しい夢を見た。
 ブラームスになった僕が葉巻を咥えて歩いている。
そこへひょっこりとハリネズミが現れた。しかもそのハリネズミは赤かった。僕はその赤いハリネズミについて行った。そこへ向うから二人の知り合いの教授がやってきた。僕はその教授たちにカメラを持っているか訊ねたら、一人の教授が持っていると言って、僕と赤いハリネズミを撮ってくれた。
 ブラームスクララ・シューマンは膨大な書簡を交わした仲だ。だが慎重で厳格なブラームスは晩年、クララと相談してその多くの書簡は破棄された。クララは娘の説得である程度の手紙つまりブラームスからの書簡が残っているが、ブラームスはほとんど破棄したのだろう。だから二人の核心的な手紙はこの世に残っていない。それが二人のロマンスにもなっている。
 さて、ブラームスは教授からもらった赤いハリネズミと一緒の写真が一生の宝物になったのだろう。宝物は人に見せるものではない。おそらく机の引き出しに大切に収めていた事だろう。そして慎重で厳格なブラームスの事だ。それさえもクララの書簡とともに破棄されるのだろう。