子猫物語(9)


(モナカはまだカイとシータの存在を知らない)
 ひと月前位から私の骨折した手首の調子が悪く、リハビリに専念したりするうちあっという間に10月になってしまった。子猫の成長もあっという間だ。我が家の状況は今までと変わっていないのだが、子猫だったカイちゃんとシーちゃんはすっかり親猫のように大きくなった。それでいてやっている事は子猫と変わっていないから大変だ。騒々しくてしょうがない。こうしてパソコンのキーを打っていると急に目の前を走り去っていく。そしてパソコンの画面には奇妙な文字の羅列が残されていたりする。「こら〜、シーちゃん」と怒鳴って続けていると今度は突然に電話が応答する。「ファックスを送信します。電話番号を押してください。ピッピッピッ」見ると、カイちゃんが電話機に乗っている。「こら〜カイちゃん、どこにファックスするんじゃ!」慌ててカイちゃんを抱き下ろす。
 今はカイちゃんという呼び名も馴れた。だが、嫁さんと「あいつらねえ・・・」と言う時はカイちゃんとシーちゃんをさす。「あいつらねえ・・・」と言う時はろくな事にはなっていない。その『あいつら』は確か最近までライ君とルナちゃんをさしていた。
 そのルナちゃんは今は大人しく寝ている。以前のように威嚇して吠える事も無くなった。そのストレスだろうか、窓の外に向かって吠える事が多くなったような気がする。ライ君も大人しく伏せているかゴロゴロしている。僕が「カイちゃん」と呼ぶと必ずライ君がいそいそとやってくる。僕が「あんたはライちゃん!」と言いながらちょっとおバカな忠犬の頭を撫でてやる。