子猫物語(8)

 アルファはうちに(実家)よく来た。そしてコゲ達が食べていたキャットフードを貪るように食べて行った。
 一方、我が家のカイ君とシーちゃんはチビのくせにやりたい放題だった。ライ君のシッポに絡むや、ルナちゃんの耳をかじるやで無茶苦茶だ。ライ君はハッハハッハしながらおとなしく耐えている。ルナちゃんは無視して寝ているが、突然にウワンと威嚇する。その頃は僕達もルナちゃんの味方だった。少々なら噛んでやれっていう気持ちでルナちゃんを応援した。
 よく人から、大きい犬が二匹もいて子猫たちは大丈夫なのですか?と訊かれる。それに対して僕はピーちゃん先生の言葉をそのまま伝えた。それは昔ムンちゃんと山に散歩に行った時に保護したモナカを飼う事になった時、ピーちゃん先生に相談した答えだった。
「犬は家族を守る生き物なのです。その家族が大事にするのなら犬も大事にしますよ。ただ、猫が先にいて仔犬が後に来たものなら、猫はストレスを抱えるかもしれませんがね。」
その言葉通りに、ムンちゃんとモナカは大の仲良しになった。そしてその言葉通り、モナカとルナちゃんはいまだに接触をさせていない。そしてその言葉通り、今こうしてライ君とルナちゃんはカイ君とシーちゃんの傍若無人な振る舞いに大人の対応で見守っている。
 カイ君はシーちゃんより少しだけ大きかった。だから取っ組み合いもカイ君の方が圧倒的に強かった。が、戦略的にはシーちゃんの方が長けていた。カイ君は正攻法に正面からバッと飛びかかるのに対してシーちゃんは自分からいくことはなく仰向けになって相手がかかってくるのを待ち受けている。カイ君が飛びかかると抱きかかえて反転し取っ組み合いに持ち込むのだった。でも最終的には身体の大きいカイに軍配があがった。
 初めてカイとシータをピーちゃん先生の所へワクチンを打ちに連れて行った。そこでカイが男の子ではなく女の子である事がわかった。僕はしばらく今まで呼んでいた癖がぬけないで「カイ君ちゃん、カイ君ちゃん」と呼んだ。