子猫物語(7)


(なんか急に家族が増えちゃったってさ〜)
 僕は嫁さんと一緒にピーちゃん先生の所へ子猫たちを持っていった。
 生後一ケ月位で性別はまだ分からないが、多分こげ茶はオスでグレーはメスだろうとの事だった。ワクチンは一ケ月後でいいと言われ、その日はそのまま連れて帰った。
 子猫たちの名前は息子に付けさせた。ギリシャ文字のXを意味するχ【カイ】とCを意味するθ【シータ】と名付けられた。僕達たちその日からこげ茶の仔を『カイ君』、グレーの仔を『シーちゃん』と呼んだ。
 一方、実家に於いては屋根裏へ通じる穴を見つけなければならなかった。屋根に登って四方を探すと比較的容易に穴は見つかった。だがすぐに塞ぐ訳にはいかない。中にコゲがいたら大変だからだ。次の日に穴を塞げるような金網を買って用意した。天井からの入り口を開けて懐中電灯で中を照らして様子を見た。
 するとなっなんと、懐中電灯の明かりに照らされたのは柱の蔭からこちらを見ている子猫だった。その時は僕はコゲの相手だと思った。
 いつものように夕方餌をやってみると、その子猫が食べにきた。白っぽい真ん丸顔の可愛い子猫だった。カイ君やシーちゃんより二周りは大きかった。よっぽど腹を減らしているのだろう。無警戒に一生懸命食べていた。コゲは人相が変わった。僕を以前に増して警戒しているような顔つきになった。それもそうだろう。コゲは屋根裏にいた四匹の子猫を僕が搾取したと思っているのだろう。僕は塀の上でこちらを伺っているコゲに言った。
「お前ねえ〜、自分のせいで二匹は死んだんだぞ。二匹はうちで大事に飼ってやるからな。この仔もこの家で飼ってやるからな。お前も捕まって避妊できたら飼ってやるのに・・・言っている事わかるか?」
わかるはずない!
 翌日、彼らが外にいる事を確認して屋根裏に通じる穴を金網で塞いだ。
 それからというもの、コゲはますます警戒するようになり顔つきも悪くなった。そしてコゲが教育したのだろう。子猫の方も警戒し僕が餌を置いてもすぐに来ないで様子を見ている。掃き出し窓を閉めるとすぐにやってきて食べ始める。僕はこの仔をギリシャ文字のAを意味するα【アルファ】と勝手に名付けた。
  ###(次の掲載は19日(木)になります。