ライ君が我が家にやってきた(1)


(いよいよ僕が主役?)
 一週間に2度はそのペットショップに足を運んだ。ライ君だけでなく、店員の若い女性達も温かく僕達を迎えてくれた。僕達の姿を見つけると「ライ君、パパが来たよ!」と言ってライ君に会わせてくれた。今冷静に考えると、その頃ライ君には何十人ものパパがいたんだと思う。だが僕には簡単にパパになる訳にはいかなかった。だって大きくなったライ君の値段は25万円もした。
 8月末の暑い中ムンちゃんが亡くなって、3ケ月が経った。すっかり涼しくなった。ライ君は2歳になった。ベルジアン・タービュレンはある本ではベルジアン・シェパード(ベルギーのシェパード)と書かれているだけあって、賢そうだった。それでいてドイツのシェパードより優しそうだった。その頃僕は、シェパードが出てくる映画(DVD)を何度も観た。
 新しい年を迎え、働いている娘が帰ってきた。一緒にライ君を見に行った。
「どう、かわいいだろう。飼わんか?20万円出せば、残りの5万円は出してやるぞ。」と僕は娘に言ったが無視された。ところがだ。その僕の声を神様は聞いていたのだった。
 2月のある日、ペットショップに貼られていた小さなカードに『ベルジアン・タービュレン3万円』と書かれていた。僕は女性店長に「これってライ君ですか?」と訊いた。
「そうですよ。」
「だって数日前まで25万でしたよね?」
「可愛がってくれる人に飼われるのがライ君の為ですから、その値段でいいのです。」
「じゃあ、今までかかったワクチン代とかで総額いくら位になりますか?」
 若い女性店長は笑いながら言った。
「全部込みでその値段です。」
 これで決定だった。
「気持ちの整理と家の整理をして明日、迎えに来ます。」と、僕と嫁さんはそう言ってその日は帰った。