ムンちゃん物語(6)


(誰がブタネコだって)
 モナちゃんは嫁さんと仲良しだ。僕は断然犬派だが嫁さんは猫派だ。モナちゃんはそれを本能で感じているのだろう。モナちゃんを飼って12年経った今でも僕が「もなちゃ〜ん」と猫なで声で近づこうとすると逃げる。モナちゃんは12年間ずっと嫁さんと一緒に嫁さんのベットで寝ている。モナちゃんはムンちゃんとも仲良しだ。
 ムンちゃんは娘が大好きだった。高校の娘が学校から帰ってくると喜んで一緒に娘の部屋へ行ったきり籠っていた。娘が学校で家にいなくてもよく娘の部屋を出入りしていた。
 ある日娘の部屋から「ああこのバカ犬!なんて事してくれたの!も〜う」と怒声が響いた。
 何事かとみんなで娘の部屋を覗いてみると、そこには破れた小さなビニール袋が散乱していた。どうしたのかと娘に訊ねると娘は、
「修学旅行のお土産を後輩たちに配る為に買っておいたお菓子を、しかもムンちゃんに見つけられないように隠しておいたお菓子を全部食べられた。」と言う。
 よく見ると一つずつ入っていたビニールの小袋が20ケばかり、見事に全部袋から取り出して食べていた。怒り心頭の娘を傍目にとぼけた顔をしているムンちゃんに、「すごいねえ。よくその大きな手で器用に小袋から出して食べたねえ。と言って、娘には
「まあムンちゃんの努力に免じて許してやってくれ。」と慰めにもならない言葉を掛けてやった。
 そんな楽しい思い出がたくさん詰まったトトロのような家を引っ越す事になった。