モナちゃんが来た


(えっ、私?)
 ムンちゃんと毎朝のように山へ行くようになって一年は経っただろうか。
 ある朝、いつものように僕が嫁さんと一緒にムンちゃんを連れて山へ向かう途中、少し登り道にかかった所で子猫がミャアミャア言っているのを発見した。まだ生まれて一ケ月位だろう。小さな白黒の似たような子猫が二匹道の真ん中で鳴いていた。
 僕達はとりあえず二匹を道端の草むらに置いて、ムンちゃんとの散歩を続けた。
 その間中も僕は嫁さんに「帰りにあの子達がいたらどうしようか?」と訊いた。
 嫁さんはいつものように応えた。「その時に考えたら。」因みに嫁さんはB型だ。
 そして約2時間後その時がきた。
 二匹はまた道の真ん中に出てきている様子が遠くからもわかった。近寄ると一匹は車に轢かれたかカラスに襲われたかで、血を流して絶命していた。その隣で一匹がミャアミャア鳴いていた。
 僕達はとりあえずその子を抱えて家に帰った。すぐに動物病院へ連れて行った。ピーちゃん先生はお尻にわいていたウジ虫を丁寧に取って、虫下しを処方してくれた。
 実は僕は猫が好きではなかった。(嫌いでもない)
理由の一つに猫アレルギーがあった。というのが、数年前、喘息になった折にアレルギー検査をした時に猫アレルギーがある事がわかったのだ。
 そういえば昔から猫のいる家にいったら風邪をひいたような症状になっていた。
 だから僕は子猫を連れて帰っても、飼うつもりはなかった。その時は里親になってくれそうな人を二人あてにしていた。一人はすでに4匹の猫を飼っていて、もう一人は10匹以上の猫を飼っていた。
 僕はすぐに二人に連絡をしたが即座に断られた。
それからはいろいろな人に子猫の存在を知らせた。
勿論名前なんて付けていない。その子猫は僕のお腹の上でよく眠った。
 一か月程経っただろうか。ある人が僕に言った。
「おばあちゃんの猫がこの前亡くなって寂しがっているから、おばあちゃんに訊いてみる。」
 その時僕は急に寂しくなった。そのおばあちゃんが飼わなかったら我が家で飼おうと決心した。その結果として我が家で飼う事になった。
さっそく子猫に名前を付けた。鼻の所が餡子がはみ出したように黒かったので、『モナカ』にした。