ムンちゃん物語(4)


(被り物の天才、ムンであった)
 ムンちゃんには朝の散歩のお友達が2匹いた。と言っても一緒にお散歩に出掛ける訳ではない。我が家から30分も歩いた所に、砂防ダムのあるちょっとした公園があった。そこはお散歩に最適だった。何故ならそこからちょっとした山登りができる登山道が3つもあった。野イチゴを獲ったりしたものだ。
 そこへ行くと毎日のように黒ラブと黄ラブにあった。(勿論それぞれの飼い主にも)
 黒ラブは少年のように元気で可愛かった。黄ラブはとにかく泳ぎが達者だった。彼らは砂防ダムに溜まった池で楽しそうに泳いでいた。
 それまでムンちゃんは泳げなかった。最初は身体ぎりぎりまで水に浸かりながら彼らが泳ぐ方へ行きたがっていた。
 そんな事が約1ケ月あったある日、ムンちゃんが何を思ったのが足の届かない所まで泳いで行った。と言いたかったがそんな訳がない。彼女は溺れるように前足を水面上にバタバタしながら顔が水面下に沈んでいった。僕が『溺れたっ!どうしよう・・・』と思っていたら、すぐにハアハア言いながら水辺に戻ってきた。
 その彼女が、前足を一生懸命に水上をバタバタさせずにスウーと水面下で動かせば身体が安定して簡単に泳げる事を学ぶのに3日もあれば十分だった。
 泳ぎを知った彼女はもう怖いものなしだった。水を見れば嬉々として飛び込んでいった。
 そんな彼女が、今でも忘れる事ができないある事件を起こしたのだ。