ムンちゃん物語(3)


(雨の日のムンちゃん)
 ムンちゃんの武勇伝?は枚挙に暇がない。その実績で我が家の中では自然と彼女の事を『プリンセス・ムン』と呼んでいた。
 例えばある商業施設へ行った時の話だ。勿論ムンちゃんは中へ入る事が出来ない。だから車の中でお留守番にした。当然窓は逃げられない程度に窓を少し開けておいた。
 僕は可愛い娘を残したように心配で、施設の窓から駐車場に停めていた車を何度も見た。その何度目かだった。それは確かに僕の目の前で起きた。
 遠くに見える僕の車がヌクっとできもののように膨らんだ。僕はすぐにムンちゃんの頭だとわかった。すると手が出てきてだんだんと上半身が出てからスルリと窓から飛び出した。
 僕は慌てて現場に向かった。幸い彼女は車の所でヘラヘラと笑いながらハッハハッハとしていた。
 プリンセス・ムンは、脱走のスペシャリストだったが、そのまま脱走していなくなる事はなかった。
 ある日、僕達夫婦は娘にムンちゃんを任せて二日間の旅をした。
 帰ったら、家の前でムンちゃんが激しくシッポを振りながら出迎えてくれた。家の前でだ。
「何故お前がここに?娘は?」そう思いながら、ムンちゃんに近づくと・・・なんと・・・玄関のガラスが割れていた。当然娘はいなかった。まったく・・・我が家は犬も人間も娘達はみんなイリュージョンだったのだ。
 プリンセス・ムンの伝説はこれだけではない。