ムンちゃん物語(1)


(私ががムンちゃんです)
 僕はお尻を抱えても顔が自分と同じ位置にある仔犬を家に連れて帰った。名前は雌犬なのでサラと決めていた。前日も当日も大人しく抱かれて可愛くしていた。さすがに女の子だから大人しいのだと思った。
 ところがそのサラちゃん。家に連れて帰ったとたんに家の中で大暴れ。右往左往の大滑走。日曜大工で作ったハウスなる所へ連れて行って入れたものの、目の前で「おい、こら、出さんか!」的な大暴れで、腰ほどあった戸をあっという間に乗り越えてしまった。
 この瞬間彼女はハウスというものを、住居空間の一部ではなく、人間のハウスと同じ空間に変えてしまったのだった。
 『名は態を表す?』そういえばターミネーターに出てくる勇敢なお母さんもサラだったよなあ〜。僕達はすぐに家族会議を行なった。娘が高校一年生で息子が幼稚園年長組の時だ。議題は『サラは止めよう。できるだけ情けない名前にしよう。』だった。
 まず決まったのは二文字でカタカナ。後がンが付くだった。あとはアから順番に発音していけばよかった。で、決まったのはムンだった。
 これで彼女の名前はムンちゃんに決まった。それでも彼女のおてんばぶりは増長していった。