ピーちゃんが来た(1)


(在りし日のピーちゃん)
 僕も嫁さんも生まれてから全く動物など飼った事がなかったので、小さなウサギといえどドキドキ、ハラハラものだった。名前は娘と嫁さんがピーちゃんと決めた。ピーターラビットからとったのだが、我が家のウサギは女の子だったのでピーちゃんになった。
 ピーちゃんは僕に大きな驚きを与えてくれた。全ての仕草が可愛いのは当然だが、ウサギがあんなにも賢いとは思わなかった。
 ピーちゃんは生まれて2ケ月位だったので、まだ女性の拳程の大きさで全身濃いグレーだった。それが家の中をウロウロするのだ。でも子猫のように傍若無人の振る舞いはしない。ピョコタンピョコタンと興味向くままにウロウロする。ピョコピョコと走りまわる姿も可愛い。一応全室解放の完全なる座敷ウサギとして、つまりケージに入れないで飼う事にした。
 ピーちゃんは数日でトイレを覚えた。部屋の隅に新聞紙を広げて置いておけばそこにする。部屋には当然電化製品のコードが張り巡らされていたが、それをかじる事はまずなかった。木製家具の足の一部をかじる程度だった。たとえ台所に野菜等を置きっぱなしにしておいても、それらをかじる事もなかった。玄関戸を開けっ放しにしておいてもピーちゃんは出る事も逃げる事もなかった。
 ウサギは犬猫みたいに慣れるとは思っていなかったので、名前を呼んだら来ていたピーちゃんに感激したものだ。夜になると座敷に座っている嫁さんの周りをピーちゃんはクルクル、クルクルと左回りや右回りを始める。ポテトチップスをおねだりしているのだ。そうなのだ。私と嫁さんは初めて飼ったのがピーちゃんだったので、世のウサギはみんなこんなに賢いのだと思ってしまったのだ。