エピローグ(3)

 そしてオロチの顔を見るや否やその男が言った。
「よおオロチさん、さっき挨拶したばかりなのにまた会いましたね。とは言ったものの、今晩はここにいるであろうと話しながら来たのですけどね。」
「こんばんわ、お二人様。」
「あっ、やっぱりタア子さんもいましたね。という事は、オロチさんの向う隣のお方はブラマンさんですね。」
「ああ、そうだよ。久しぶりだねえノブタ君。でも今晩のオペレッタを観た後では久しぶりという気がしないねえ。奥さんもお元気そうで何よりだ。こうして本当に会うのは君達の結婚式以来じゃないかなあ。」
「その通りですわよ、ブラマンさん。それから奥さんって水臭い呼び方しないで。今まで通りノブチンと呼び捨てにしてください。タア子さんもね。」
「わかっているわよ。これからもそう呼ぶわね。ノブチン、私の隣に座ったら。」
「では俺はブラマンさんの隣に座っていいですか?」
「ああ、遠慮なくどうぞ。」
 ノブタはブラマンの隣に座ると饒舌に喋りだした。
「それにしてもあのオペレッタはひどいよなあ、と
ノブチンと話しながらここへ来たんですよ。俺達の年齢は現在とほぼ同じなのに、何故みなさんはあんなに若くなっているのですか?しかも響ちゃんだってどうして高校生なんですか?いくら若い嫁さんをもらったからって、高校生にまで若くすると悪趣味の世界ではないですか。どう思います?ブラマン」さん。」
「いやあ、同じく若い役にして頂いた私には発言する権利はないかもしれないですねえ。」
「あら、あなたそんな事ないわよ。あなただって女役にされてたじゃない。脚本も演出も面白かったけどね。私だってバカ女になっていたし、自分だけいい子ぶって、何て奴だって感じだったわよ。」
「そう責めないでくれよ。僕達はもう歳なんだから脚本の中だけでも若くなっていい思いをしてもいいじゃないか。タア子もブラマンも主役級にしてやったんだぞ。今日の公演の中でもあれだけ拍手をもらっていたじゃないか。」
「あれは歌手が良かったからでしょう。私達とは関係ないわよ。そういえばオペレッタの中でノブチンはいい役を貰っていたわね。オロチ、私達と差別してない?」
「いやあ、全然差別してないよ。あれは演出上、各々の性格付けを際立たせる為に必要な脚色だったんだよ。」
「ふうん、演出上ねえ。お前、何をいい訳しているんだよ。あの事言っちゃおうかなあ。」
「何?何か知っているの?ブラマン。」