エピローグ(2)

「そうよ、なによ、あのタア子は!私あんなに性格がひどくないわよ。」
「いやいや、私はあのオペレッタを、性格描写が見事に表現されたいい作品だと感心して鑑賞していたよ。」
「だと嬉しいね。僕としてはタア子を主役レベルにして書き上げたつもりだけどね。あれでも随分と優しい性格にしたつもりなんだけどなあ。」
「性格はともかく、なんで私あんなにバカなのよ。オロチ、ひどいじゃない。」
「いやいや、昔ブラマンから聞いた事を思い出しながら書いたので、ほとんどノンフィクションな筈だけど・・・もっと面白い話も聞いていたのだけどなあ・・・」
「あなた、私の事をそんなにいろいろとオロチに話していたの?」
「いやあ、昔の事なんて覚えていないよ・・・それにしてもよくくだらない話の細部まで覚えているものだね。」
「それって褒め言葉かな?そうでなきゃ脚本は書けないさ。」
「それに演出もできないってか?それにしても響ちゃんも随分と上達したねえ。抜群にいい曲を創るようになったじゃない。」
「それは嬉しい言葉だねえ。彼女に言っておくよ。」
「今日はここへ来ないのかい?」
「あなた、響ちゃんは今日のオペレッタの主役よ。忙しくてこんな所へ来られる訳ないじゃないの。」
「それを言うのならオロチだって陰の主役だぞ。お前こそこんな所に居ていいのか?」
 するとカウンターの中にいた白髪のダンディーなマスターが言った。
「こんな所で悪かったねえ。もっといい所へ行ってくれてもいいんだよ。」
「マスターごめんね。でも僕達みんな口が悪いのは昔からご承知でしょう。」
 オロチが軽口で謝っているその時、店のドアが開いて二人の男女が入ってきた。