エピローグ(1)

     エピローグ 居酒屋にて
 私達はお洒落な居酒屋のカウンターで赤ワインを飲み交わしていた。お相手は勿論タア子だ。こうした付き合いを始めてもう何十年になるのだろうか。彼女とは大学の学友のような関係から、なんとなく恋人として付き合い始め、なんとなく結婚してしまった。お互いに随分と歳をとったが、タア子と飲みながら話するのは相変わらず楽しい。
「それにしても、あいつ遅いなあ。」
「仕方がないじゃない。今日の隠れた主役だったんだから。関係者への挨拶も大変なのでしょう。」
 そうなのだ。何十年もこうした付き合いをしているのはタア子だけではなかったのだ。もう一人飲み仲間がいた。どうやらあいつが来たようだ。私は隣の席に移動してタア子との間に席をつくってやった。これも私達の慣習だった。
「お〜い、オロチ。ここだ、ここだ。」
「わるいなあ、遅くなってしまって。それと気を遣わせてしまったね。あれ赤ワインだろう。」
「なに構わんさ。響ちゃんには花束をあげたのだけど、お前は酒の方がいいと思ってね。」
「ああそうそう、響ちゃんがブラマンとタア子さんによろしくって言ってたよ。」
「へぇ〜、あのタメ口の響ちゃんがねえ。大人になったもんだわね。」
「それをお前が言うか?お前だって先生に対して相当なタメ口だったぞ。」
「まあまあ、お二人さん。その犬も喰わぬやりとりを今まで散々聞かされてきた僕としては、今回はそれを参考にさせてもらって、脚本に利用させて貰ったよ。」