カーテンコール(4)

 全開の照明の下、最後の場面のセッティングままで出演者の全員が並んで舞台上に立っていた。舞台に向かって左下手側から、イベリコ、イルカさん、神杉静江さん、ノブタにノブチンと並んで、舞台中央付近にタア子とブラマンと赤ハリ先生が並んだ。そしてそのまま右へオロチにタメ池、猪木と続いて並んでいた。壮観だった。みんな一斉にお辞儀をした。タア子が一人舞台袖に引っ込んだ。
「いよいよ指揮者の登場だな。作曲家や演出家も一緒に出てくるのかなあ。」
「黙れ、ブラマン!」
 タア子が指揮者の手を取り舞台へ戻った。指揮者はもう一人の男性の手を取っていた。
「出てきたぞ。やっぱりあいつも出てきたな。」
 タア子に連れてこられた指揮者と演出家はタア子とブラマンの間に入って、観客の大歓声に手を合わせながら深々と感謝のお辞儀をした。そして指揮者は舞台の前に進むと、オーケストラピットの中にいる団員を拍手でねぎらった。その間観客の拍手は更に大きくなった。今度は演出家が一歩前に出て二階席の方へ右手を差し向けた。すると二階席で一人の女性が立ち上がって一礼し、舞台上にいる出演者達に拍手をした。
「ほう、作曲家は舞台に上がらなかったのだね。演出家と一緒に舞台へ出てカーテンコールを受けるのかと思っていたよ。」
「目立つのが嫌だったんじゃない。彼女らしいわね。彼女の楽屋に立派な花束を届けておいたからね。」
 場内の大きな拍手に包まれながら、出演者達と指揮者、演出家が揃って深々と一礼した。するとサッと緞帳が閉じられた。終演だ。
 それでもしばらく拍手が続いていたが、次第に弱くなって消え、最後はザワザワとした観客達の華やいだ声が会場に響いていた。そこへ女声のアナウンスが会場に鳴り響いた。
(本日はご来場頂きまして大変ありがとうございました。池野響作曲、オペレッタ『赤ハリ先生の居酒屋』は、これをもって終演とさせて頂きます。皆様お忘れ物等ございませんように、お足もとに気をつけてお帰り下さい。本日はどうもありがとうございました。)

#カーテンコール(終わり)
(最終章エピローグ)は5月23日(木)より