第四幕第一場(10)

【イルカさん】
 彼女ですって?ブラマンが?
【神杉静江】
 彼女って、その方は女性?
【ノブタ】
 しかもその若い女性がブラマン?
【ノブチン】
 では本当のブラマン先生は何と呼ばれているの?
【タア子】
 赤ハリ先生って呼ばれているのですって。しかも  私が名付け親だそうよ。
【オロチ】
 それはシャドーですね。
【タア子】
 シャドー?
【オロチ】
 そうです。シャドー、つまり影です。先生の深層心 理に持っている自分の影の姿ですよ。
【イルカさん】
 それは面白い話ね。
【神杉静江】
 そのお話は興味深いですわ。
【ノブタ】
 どうですか、このままみんなで二次会にいきません か?
【ノブチン】
 いいわね。みんなで行きましょう。
【タア子】
 賛成だわ。この人をこのまま放っておいていいか  ら、みんなで二次会へ行きましょう。
♫♫♫
 オーケストラは最高潮に盛り上がった。
 そして出演者の合唱が始まった。
【赤ハリ先生以外の全員】
 行きましょう、行きましょう、二次会へ!
 行きましょう、行きましょう、二次会へ!
 ブラマンという若い女性を語りましょう。
 赤ハリ先生について話しましょう。
 行きましょう、行きましょう、二次会へ!
 行きましょう、行きましょう、二次会へ!
 行きましょう、行きましょう、二次会へ!
 行きましょう、行きましょう、二次会へ!
♫♫♫
 出演者たちはガヤガヤと歌いながら舞台袖に引っ込んだ。
 オーケストラだけの響になった。
 舞台上は赤ハリ先生のみが空き瓶を持って仰向けに大の字になって寝ている。
 そしてオーケストラの響きが急に止まった。
 赤ハリ先生が、ヌクッと上半身を起こして叫んだ。
「ブラマンが幻想だって?では、赤いはりねずみは?赤ハリ先生は?まあいいでしょう。人生そのものが幻想的なのですから。それだったら楽しいオペレッタがいいのではないですか。」
 ジャン!
 オーケストラの最後の一音と同時に舞台の緞帳がサッと閉じた。
 会場からは大きな拍手が起こった。
(第四幕 終わり) 
 来週より(カーテンコール)(エピローグ)と続きます。